三味線とちんとん - 受け継いでいるもの、変えたもの | 三絃司きくおか

三味線とちんとん

ちんとんを初めて弾いた方によく言われるのは、「思ったより、いい音がする」ということ。

それもそのはずで、ちんとんは三味線の技術と奏法をしっかり受け継いでいます。

弦は同じ3本、調弦の方法も同じ、左手でツボ(勘所)を押さえて音程を変えるのも同じ。三味線の楽譜をそのまま使って弾くこともできます。

そのうえで、現代の暮らしの中で気軽に楽しめるようにしたのがちんとんです。

三味線の音色を、暮らしに馴染む素材で

三味線の棹は紅木、紫檀、花林といった硬くて重い木材でつくられます。ちんとんの棹はヒノキ。三味線の硬質でシャープな響きに対して、ちんとんはもう少し丸みのある、やさしい音色になります。

胴の素材も少し違います。三味線は猫皮や犬皮(最近は合成皮も増えています)を張りますが、ちんとんはユポ紙という合成紙を使っています。

天然皮のような繊細な響きとは異なりますが、「破れない」「湿度を気にしなくていい」という安心感があります。

三味線を持っている方なら、梅雨時に皮の状態が気になったり、うっかり破ってしまった経験があるかもしれません。ちんとんなら、リビングにそのまま置いておいても大丈夫です。

ピックで弾く

三味線の撥(ばち)は、銀杏の葉を大きくしたような形の木製道具で、手首を使って振り下ろすようにして弦を弾きます。あの三味線特有の力強い音はこの撥から生まれます。

ただ、角度や力加減、手首の返しなど、慣れるまでにそれなりの時間がかかります。

ちんとんでは付属の富士山型ピックで弦をはじきます。

ギターのピックに近い使い方で、直感的に弾けます。撥のような迫力は出ませんが、そのぶん「ちょっと弾いてみようかな」と思ったときに、さっと手に取れます。もちろん、弦を押さえて音を出す感覚は三味線と同じです。

部屋でも気軽に弾ける

三味線は全長約100cm。ちんとんは約70cm。数字では30cmの差ですが、実際に手にするとかなり印象が違います。片手で持てるくらい軽いので、棚から取り出してすぐ弾けます。

音量も、三味線は稽古場や舞台で映える豊かな音が出ますが、マンションで弾くとなると気を使います。

ちんとんは音量が穏やかなので、隣の部屋に響くほどではありません。夜に少し弾いても大丈夫なくらいです。

三味線と地続きの楽器

弦の数(3本)、調弦の体系(本調子・二上り・三下り)、左手の運指——奏法の基本はすべて三味線と共通しています。ちんとんで覚えたことは、三味線に移ってもそのまま活かせます。三味線経験者がちんとんを弾くと「あ、同じだ」とすぐに馴染めるのもそのためです。

ちんとんは三味線の「別物」ではなく、三味線と地続きの楽器です。

三味線の音色や奏法の楽しさを、現代の住まいや暮らし方に合わせた形で届けたいという思いからつくりました。

どちらを選ぶかは、暮らし方次第

本格的に三味線を学びたい、いずれ舞台で弾きたいという方は、最初から三味線を選ぶのがいいと思います。撥の扱いも含めて、三味線でしか身につかないことがあります。

「和の音色を日常で楽しみたい」「まず弦楽器に触れてみたい」「部屋に気軽に置いておきたい」という方には、ちんとんが向いています。ちんとんで三味線の世界に触れてから、本格的な三味線に進む方もいます。

三味線が持っている魅力を、暮らしの中で楽しむための入り口としてちんとんをお楽しみいただけたら嬉しいです。

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